子育て支援の 多様化|ともに育つ・育む!
子育て環境の多様化にともない、支援の方法も多種多様に。 家庭に合った支援を選ぶために必要な知識や選び方・利用方法について、 村上涼さんにお聞きしました。
子どもの利益を保障することが子育て支援最大の目的
「子育て支援」の最大の目的は、「子どもの最大の利益を保障すること」です。
子どもが一人ひとり健やかに成長し、子どもを安心して生み・育てられる社会の実現が目的で、保護者が主体的な子育てができるように、地域社会の関係機関や住民らが協働して、子どもの最善の利益を保障するための取り組みといえます。
家庭環境や子どもの成長に 合わせた数々の支援
●妊婦健診事業
健康面の相談以外にも、妊娠中に不安を感じるといった心理面での相談も可。多胎妊娠等のリスクのある妊婦には、個別訪問等を行っている自治体も。
●乳児家庭全戸訪問事業
生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を専門職が訪問し、保護者の育児環境などを把握するとともに、必要に応じて情報提供を行い、育児に困難を抱える家庭を養育支援訪問事業に結びつける。
●養育支援訪問事業
保健師、助産師、保育士等が家庭を訪問して行う、養育に関する相談支援や育児援助。
●仕事・子育て両立支援事業
代表的な事業のひとつ「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」は、繁忙期や夜勤等があったときに、安価でベビーシッター派遣サービスを利用できる。勤務先が同事業の承認事業主であるか確認が必要。
●子育て短期支援事業
急な出張や冠婚葬祭、保護者自身の病気等により育児ができない場合に宿泊型で子どもを預かってもらえる。対象年齢は、おおむね乳幼児から小中高生。
●地域子育て支援拠点事業
主に児童館、公民館、保育所に併設され、子どもが安全に遊べる環境が設定され、保護者同士の交流や、保育士等による育児相談および情報提供が行われている。
●一時預かり事業、延長保育事業、病児保育事業など
親が家庭での育児が困難になった場合、保育所などで利用できる。
●ファミリー・サポート・センター事業
幼児や小学生の保護者等を会員として、育児の援助を受けたい人と援助を行いたい人との相互援助を手伝うために連絡・調整を行う。
●こども誰でも通園制度(仮称)
保護者の就労有無や理由を問わず、未就園児が保育施設を時間単位で利用できる。「孤育て」の予防、子どもの健全な成長の支援が目的。2026年度実施予定。
必要な支援を受けるために 積極的に情報取得を!
まずはご家庭で必要としている子育て支援を自治体のHPで調べて問い合わせましょう。
保健センター、児童館などに相談窓口があります。自治体によっては、妊娠届の時点からの妊産婦支援にはじまり、子どもの誕生後は子育てや子どもに関する相談を総合的に受け付ける「こども家庭センター」が設置されている場合も。
妊娠期から子育て期までの選択可能な支援の提示や、必要に応じてサポートプランも作成してもらえます。
設置率は、令和6年7月段階で全国の市区町村の半数程度ですが、今後は全国的な設置が見込まれます。
子育て支援を受けるには、支援事業を実施している自治体の管轄部局課への申し込みが必要ですが、郵送やオンラインでの受付を行う自治体も増えてきました。
子育ては予測不能なことも多いので、子育てに関する情報源を確保しておくことが大切です。自治体など行政機関からのフォーマルな情報とママ友やパパ友仲間からのインフォーマルな情報がありますが、両方の情報源を確保しておくことで、困ったときの相談先につながります。
共働きやアウェイ育児のような育児環境において、支援なしで子育てをすべて保護者が行うことは難しい社会状況にあります。しかし、子育ての当事者が積極的に情報取得に動かないと支援を受けられない現状がまだあります。
ぜひ子どもの年齢に合わせた支援情報にアクセスして、子育てに活用してください。
教えてくれたのは…
江戸川大学 メディアコミュニケーション学部
こどもコミュニケーション学科 教授
村上 涼 さん
専門は臨床発達心理学、保育の心理学。自治体の依頼により保育所・幼稚園等を巡回して保護者や保育者の発達相談を受ける巡回指導員。公認心理師・臨床発達心理士、臨床発達士認定運営機構理事。流山市子ども・子育て会議会長、江戸川大学こどもコミュニケーション研究所長。