子育てのポイント 「自己肯定感」を高める|ともに育つ・育む
人間の生きる力や自信を育む「自己肯定感」は、日本の幼児教育の中で重要視されている視点の一つ。 子どもの自己肯定感を高めるためにできること、そして新しい取り組み「ほめ写プロジェクト」についてNHKのEテレ「すくすく子育て」や雑誌等で子育ての助言を行っている東京学芸大学教授岩立京子さんに聞きました。
Q.なぜ、子どもの成長にとって『自己肯定感』が大切なの?
私たちの生きる社会は、成果主義と評価の眼差しに満ちています。“成績がいい子”“〜が出来る子”“〜が速い子”など、常に値踏みされ、変化していくことを強要されがちです。幼い頃から「〜ができなければならない」「できない子はよい子ではない」と言われ続けると、自分で自分を受け入れることができなくなります。そして自信を無くし、心を閉ざし、周囲の大人から「この子はダメだ」と思われるのではないかという“見捨てられ不安”が生じることがあります。さらに、頑張っても変化が見られない時などは、焦りや不安が高まり、心が傷つきます。人間は、失敗したり自己嫌悪に陥ったりしますが、自己肯定感という安心があれば、それを一時的なものとして乗り越えられる可能性が高くなります。反対に自己肯定感が低いと、失敗感や自己嫌悪の悪循環に陥ってしまいがちです。
自分のありのままの姿を認め「自分は自分であって大丈夫なんだ」という自己への信頼=自己肯定感を持つことができれば、他者に対して自分らしく振る舞え、やがては他者をも信頼する「他者肯定感」として良好な関係を築いていくことに繋がります。また周囲のことや人などに心を開いて自分を表現できるので、いろいろなことに取り組んだり、失敗しても再びチャレンジしたりできるようになります。自己肯定感は、人間の成長と変化を支える重要なものなのです。
Q.子育ての中で、子どもの『自己肯定感』を高めるために、親にできることは?
子どもの自己肯定感を高めるためには、ただ「ほめる」ということだけではなく、子どもの良さや可能性を認め、自ら主体的に学び、成長する環境を作っていくことが大切です。
◆子どもの自己肯定感を高めるポイント◆
●子どもに温かい眼差しを向ける
ありのままを受け入れるような眼差し。結果はどうであれ、やろうとしている気持ち、頑張っているプロセスに温かい眼差しを向ける。
●励ます。大丈夫だよと安心させる
子ども自身のやろうとすることを見守り、認め、援助していく。
●結果はどうであれ、「頑張ったね」「すごいね」とほめる
年長になるに連れて、ほめても「こんなのすごくない、失敗なんだ」と言う子も。そんな時は「ちょっと失敗したけど、ここは素敵じゃない」と良さを認め言葉で表現したり、「こうすればうまくいくかもしれないね」と助言したりする。
●出来るような環境を作る
結果が失敗ばかりしていたら、いくらほめても、自己肯定感は育ちにくくなるので、その子に出来るような環境を作ることも必要。
◆成長に応じたポイント◆
●乳児
優しく語りかけたり、お世話をしたりする。ガラガラや、オルゴールメリーなど乳児用の遊具などで、楽しく遊ぶ。「あなたが大好きよ」というメッセージを与えることになる。
●幼児
一緒に料理をして、子どもにも出来ることを手伝ってもらい、ほめる、子どもにも出来るようなお手伝いをしてもらい、ほめる。また、ママはうれしいなどというIメッセージ(アイメッセージ)で返す。
Q.最後に、今注目の 「ほめ写プロジェクト」とは?
「ほめ写」とは、子どもの写真プリントを家の中に飾り、それを見ながらほめてあげる新しい子育て習慣のこと。教育評論家・親野智可等氏が小学校の教師として、多くの子どもたちと接する中で感じた「自己肯定感が子どものよりよい成長を左右する」「写真を使って子どもをほめると子どもの自己肯定感が高まる」という考えに、共感の声が広がり生まれたプロジェクトです。実証実験を通して「ほめ写」を体験した子どもは、体験していない子どもに比べて、肯定的なイメージを持って、自分の写真を見ている可能性があることが分かりました。今後は、ママやパパを対象にホームページでの定期的な情報発信やセミナーの開催などを展開していきますので、参考にしてみて下さいね。
日本の子育てにおける『自己肯定感」の現状は…
教えてくれたのは…
東京学芸大学総合教育科学系 教授 岩立 京子(いわだて きょうこ) さん
専門分野は幼児教育、発達心理学。東京学芸大学幼児教育科で30年にわたり、幼児教育の専門家養成に従事。NHKのEテレ「すくすく子育て」、雑誌等において子育ての助言を行っている。ほめ写プロジェクトのメンバーとしても活躍中。