ともに育つ・育む|心と身体が楽になる産後ケア
産前後で急激に変化するママのカラダ。体力も回復していないだけでなく、慣れない育児に追われたり心身ともに疲れた状態になりがち。産後に起こりやすいトラブルやケアの方法を「NPO法人 女性と子育て支援グループ・pokkapoka」代表の渡邉和香さんに伺いました。
Q.産後の心と体に起こるよくあるトラブルは?
妊娠中、出産後は今まで分泌されていた女性ホルモンの分泌量が急激に変化するので、自律神経に影響します。さらに慣れない育児の疲れや睡眠不足、初めての育児に対する不安からストレスが重なることで感情が不安定になり涙が出たり、落ち込んだりする場合があります。これをマタニティブルーと呼びますが、ピークは産後2~3日で産後1カ月くらいになれば落ち着いてきます。出産した女性なら誰でもなる可能性がありますので、家族や友人とおしゃべりしたり、しんどい気持ちを誰かに相談するといいですね。あまり難しく考えてしまうと、不安やストレスで精神的に落ち込んでしまい、身体的、精神的にもダウンしてしまいます。出産を終えたらのんびりと構え、あまり家事や子育てに神経質になりすぎず、おおらかな気持ちを持つように心がけましょう。また、出産後は乳房の緊満が始まり、母乳の分泌量が増えてきます。赤ちゃんが欲しがる時に欲しいだけ母乳を与えることで緊満は軽減します。そして、出産で変化した骨盤が元に戻ろうとし、一定期間は悪露(おろ)が排出されますので、産後1カ月ぐらいは激しく動くようなことは避けましょう。
Q.産後の過ごし方は?
出産後は内臓を支える骨盤が緩んだ状態にあるため、無理に動き回ることは禁物です。身体は緩やかに回復しますが、回復を促進するために少しずつ身体を動かす産褥
(さんじょく)体操で血行を良くしたり、筋肉を引き締めると良いでしょう。血行が良くなると悪露の排泄を促して子宮の収縮を早めたり、冷えを予防する効果が期待できます。また産後6〜8週目以降は適度なエクササイズをライフワークに取り入れると、その後の生活習慣病の予防にもつながります。
Q.大変な時期の乗り越え方を教えてください。
最近では核家族化が進み、ママ・パパが抱える不安を相談したり、助けを借りるという考えに至らない方が多くいらっしゃいます。家族以外にも話を聞いてもらえる子育て仲間を作ることで、女性特有の産後の悩みを共有でき、ママたちが相互に助け合いやすくなるでしょう。周りのサポートを受けることが難しいのなら、行政(保健センター)や地域の相談場所などを調べておいたり、買い物や食事の宅配サービスを利用しましょう。大変な時期を乗り越えるにはパパの役割も大切です。毎日、育児に関わっているママにいたわりと感謝の気持ちを言葉で表し、お互い話し合って育児も家事も分担することが理想的です。
Q.産後の心身の回復をサポートしてくれる施設などはありますか?
病院や助産所などが行っている産後ケア施設やデイケア、またホテルなどで受けられる宿泊型のレスパイトケアという新しいサービスがあります。そういった施設では、おっぱいのケア、育児技術の練習、骨盤や乳房のフィジカルチェック、アロマなどのマッサージや産後のメンタルケアカウンセリングなどが受けられます。他にも、行政や民間の助産師などの訪問サービスで自宅に来てもらえる支援サービスもありますので、特に実家が遠方だったり、夫の帰宅が遅かったりと、周りのサポートを受けられない場合はなおさら上手に活用していただければと思います。少子化、晩婚化などで子育て経験が少ない状況での出産により、育児に不安があったり、産後のサポートが受けられない場合も多くなっています。産後は、身体や周りの環境も変化するので一定の期間、心身ともにゆっくり過ごす時間が必要です。
教えてくれたのは・・・
NPO法人女性と子育て支援グループ・pokkapoka代表
渡邉 和香 さん
大阪市東淀川区を中心に、認可外保育施設、助産院での母乳育児相談、産後ケア、産後訪問サポートなどを行っている。その他、託児などの保育サポート、小学生と乳幼児がふれあえるイベント、育児中の息抜きを目的にした一時保育付きの手づくり講座など、多彩な事業に取り組む。国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)、一般社団法人 大阪府助産師会 副会長