子どもの視力が低下する一番の原因は?
子どもの視力低下の一番の原因は「近視の進行」です。近視が進行すると、遠くの映像がぼけてしまい、ピントが合いません。そのため、眼鏡やコンタクトレンズが必要になります。近視は、角膜から網膜までの眼球の奥行き(眼軸長)が伸びることで発症します。
一般的に近視は、成長期を迎える小学校高学年以降に発症することが多いようです。令和2年度の学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0未満の児童の割合は年々増加しており、小学校で37.52%、中学校で58.29%と過去最多を更新中。また、年齢が高くなるにつれて増加する傾向にあり、小学1年生で約4人に1人、小学6年生では約半数にものぼります。
子どもの視力低下の低年齢化が深刻に
近年は、「近視発症の低年齢化」も深刻になっています。原因は遺伝的要因もありますが、生活環境の影響が大きいと考えられています。中でも最大の要因となるのが、「眼と対象物との距離」です。距離が近いほど、また見る時間が長いほど、眼軸を伸ばす刺激が強まるからです。スマホやタブレット、携帯型ゲーム機の使用は、時には画面と眼の距離が20㎝以下に近づくこともあり、極めて近視が進みやすい環境であるといえます。
また、発症する年齢が低いほど近視の進行が早く、強い度数の近視になりやすいことが分かっています。強い度数の近視は網膜や視神経の病気につながり、最悪の場合は失明の原因にもなります。小学校低学年ごろに近視の兆候が表れたら、すぐに眼科を受診して進行を抑える治療を受けるのが望ましいです。
明るさより近さに注意!太陽光を浴びることも大切
親御さんが子どもの頃、「暗い所で本を読むと目が悪くなる」と言われたことがあるかもしれませんが、暗い所に限った話ではありません。本やゲーム機など、眼との距離が30㎝以内に近づくことで近視が進行しやすくなります。そのメカニズムはまだ明らかになっていませんが、近くを見るときにピント調節を行う毛様体筋の緊張を和らげるために、眼球自体の奥行を伸ばすのではと考えられています。
また、日中の屋外活動時間の減少によって、太陽光を浴びる時間が減ると近視が進行しやすくなることが、近年の研究で明らかとなりました。太陽光に含まれる「バイオレットライト(波長の短い紫色の光)」が近視の進行を抑える物質を網膜内で生成しているのではないかと考えられています。バイオレットライトは室内では浴びることができないので、特に幼いうちは、屋外で太陽光を浴びながら体を動かす時間をつくってあげるとよいでしょう。
近視を進行させないために気を付けたいポイントは?
ご家庭で気をつけるべきポイントを紹介します。
①「目と画面との距離」を意識して、40㎝以上は離すようにする。
②スマホやタブレットは手に持たず、机の上に立てて使用する。
③ゲームは手元の小さい画面でなく、遠くのテレビの大画面に映して、時間を決めて遊ぶ。
④1日2時間は屋外で過ごす。日陰や家のベランダに出るだけでもOK。
⑤近くを一定の時間見つめたら目を休憩させる(目安は20分見たら約6m先を約20秒間見る)。
保護者の適切な声掛けも大切
子どもは大人と比べて目の疲れを感じにくく、無意識に近くのものを長く見てしまうため、ここは保護者がうまく制限してあげる必要があります。近視を予防するためには、スマホやタブレットを長時間見続けることを避け、屋外活動を増やすように心がけましょう。
年齢別にみる裸眼視力1.0未満の子の割合
年齢があがるにつれて視力が低下する子が増加。幼いうちからの予防と対策が大切です。
教えてくれたのは…
視能訓練士、福岡国際医療福祉大学 医療学部 視能訓練学科
助教 潮井川 修一 先生
2004年に視能訓練士国家資格取得後、眼科医院での臨床経験を経て、2009年より視能訓練士養成校の専任教員として勤務。養成校勤務と並行して国際医療福祉大学大学院修士課程修了し、2019年4月より現職。