ともに育つ・育む|知っておきたい 子どもの食物アレルギー
近年、関心が高まっている子どもの食物アレルギー。 命に関わることもあるので、心配になりますよね。 そこで、離乳食の進め方や気をつけたいポイントについて 管理栄養士の西本裕紀子さんにお話を伺いました。
Q.食物アレルギーは なぜ起こる?
食事中のたんぱく質が大きな分子のまま粘膜を通過して吸収されることで、体がそれを異物(アレルゲン)として認識し抗体を作ります。そして「免疫」という機能により、再びアレルゲンが体に入ってきたときに、抗体が反応して産生される化学物質によってかゆみや嘔吐、下痢などさまざまなアレルギー反応が起こります。なかでも、乳児は成人に比べて消化機能が未熟で、特にアレルゲンとなりやすいたんぱく質を分解する力が弱くバリア機能も未熟なため、摂取された食物が充分に消化されないまま腸管の粘膜を通過してしまう可能性があります。結果、抗体を産生しやすくアレルギー反応が起こりやすいのです。
Q.気をつけるべき食物や 離乳食の進め方を教えて!
食物アレルギーの原因となる主な食物は年齢別に異なり、0歳児は卵、乳製品、小麦の順。1歳児では、卵、乳製品、小麦、魚卵(いくらなど)の順、2~3歳児で卵、乳製品、小麦、ピーナッツ、甲殻類、果物類の順となっています。アレルゲンとなる食物には成長期に大切な栄養価の高い食物(卵、乳製品)がありますが、いくらやピーナッツなど、無理に食べなくても問題のないものもあります。成長期に摂取する事が有用な卵、乳製品などは、通常どおり離乳食の基本的な進め方にそって食べさせていくとよいでしょう。逆にいくら、ピーナッツなどは乳児期から与える必要はなく、もう少し消化管が成長してから食べさせてあげればよいでしょう。
離乳食を進めるときは、初めてのものは1食に1種類ずつで量も少量から食べさせてください。そして、もしアレルギー反応が出て受診する場合を考えると、初めて食べるものは平日の日中に開始すると安心です。
Q.食物アレルギーと 診断されたら?
食物アレルギーは食事療法が中心となります。基本的にアレルギーがあっても離乳食・卒乳を遅らせる必要はなく、通常の離乳食の進め方で、医師にアレルゲンと診断された食品以外のものを1品ずつ進めていきましょう。ただし、子どもの成長期に摂りたいたんぱく質源などを含む食品がアレルゲンとなることが多いため、食物除去をする場合は除去によって不足する栄養素をほかの食物で補う必要があります。例えば卵を除去する場合は、それに代わって魚、肉、大豆といったたんぱく質食材を摂取しましょう。また、乳製品(牛乳)を除去する場合は、乳幼児期であれば、アレルギー用ミルクを飲用や調理に使うことが、乳幼児期に必要なカルシウムを補うのに有効です。
Q.その他、保護者が 注意すべきことは?
食物アレルギーに対する食事療法の考え方は、あくまでも正しい診断に基づいた必要最小限の食品除去です。食物アレルギーの多くは加齢に伴い耐性が獲得され、食べられるようになることもあります。そのため、自己判断で勝手に食品を除去したり食べさせたりするのではなく、専門医のもとで定期的に検査を実施し、その指示指導によって適切な時期に適切な量の食品を負荷していくことが必要です。また、アレルギーのあるお子さんが友達と遊んだり一緒におやつを食べたりする際に、知らない大人が不用意にアレルゲンの入ったおやつを与えてしまうこともありますので、誤食しないようママ同士で情報を共有しましょう。調理段階でも家族の食事を作る調理器具にアレルゲンが付着していないかなども注意してください。
教えてくれたのは…
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター
栄養管理室副室長 管理栄養士・博士(保健学) 西本裕紀子 さん
1986年に大阪府立母子保健総合医療センター栄養管理室に入職し現在に至る。(2017年度から現病院名に変更)2011年第33回母子保健奨励賞(母子保健功労賞顕彰会)、2011年毎日新聞社賞受賞、著書に「こどもの心と体の成長・発達によい食事、こども病院の医師と栄養士による食育レシピ、Ⅰ妊娠期・乳児期 Ⅱ幼児期 Ⅲ学童期・思春期」などがある。
まみたん会員さんに聞きました!
●アレルギーになる食品を触った手で、子どもの肌に触れないようにしています。保湿もしっかりしています。(こたぬママ)
●アレルギーの程度は軽いですが、外食時や既製品を買って食べる場合、アレルギー食品が入っているかどうか確認するように気をつけています。(ka-ka)
●離乳食を始めた頃から変わっていませんがアレルギーが出そうな初めてあげる食材は2,3日少量ずつあげて様子を見ています。何が原因でアレルギーが出たかわかるように初めてあげるものは手帳に記録しています。(saaayu)