スタートのタイミングは保護者主導で
トイレトレーニング(以下トイトレ)は原則、保護者主導で進めるものです。子どもにとって日々オムツで過ごす生活は当たり前のことで、「トイレでやってみたい」と言い出すのはレアケース。はじめるタイミングがわからない時は、「歩ける」「ジェスチャーや言葉でコミュニケーションが取れる」などを目安にしたり、弟や妹の誕生や親の仕事復帰など、家庭の事情でスタートしたりしても問題ありません。

トイトレは生活習慣。 自立に向かうロードのひとつ
トイトレは、「自分で靴を履きたい」「自分で食べたい」などと同じく、自立につながる生活習慣のひとつで、「成長したい」という気持ちの表れ。ひとつでもその兆候を感じたら、トイトレも勧めやすいはず。トイトレの道筋も期間も、子どもによって千差万別で長引くと親も子もストレスになり、ギクシャクしがちです。そんな時は「自立へのステップのひとつに過ぎないから、焦る必要はない」と、初心に立ち帰りましょう。

スタート前の心構えと5つのステップ
トイトレの開始と何をもってゴールとするかを、子どもを取り巻く大人の間で共有しておきましょう。
❶子どもに望む姿を想像する
最終目標は子ども自身がおしっこやウンチをしたい時に「トイレでしよう」と思うようになることです。ただオムツを外してパンツを履かせることがゴールではありません。万が一、おもらしをしてしまったとしても、「トイレでしよう」という意識が伴っていれば完了とみなしていいでしょう。

❷トイレを意識させるためにプレゼンする
親がトイレに行く姿を偶然見られるようにして「すごいでしょ」と伝えたり、年上のきょうだいがトイレに行くのを賞賛したり、日常のさりげないワンシーンとして、トイレに憧れを持ってもらえるようにプレゼンしましょう。
❸トイレを飾る
行きたい場所になるようにトイレを飾り付けることも有効な手段。トイレのフタの裏に貼るキャラクターを毎回変えるなど、予想外の仕掛けも喜びます。何かができたら都度ごほうびのシールを貼る「トイトレ応援シール」も、楽しませる演出につながりますよ。

❹トイレに誘う
気軽に声をかけられるタイミングで子どもをトイレに誘いましょう。親のトイレに抱っこで付き合ってもらってもOK。フタを開ける、座る、水を流すなど、子どもがトイレで自ら行動するようになったら、トイレで用を足すことを提案してください。偶然でも成功した場合には最大級の賞賛を送りましょう。
❺パンツでおでかけする
親が誘わなくても子どもが自分からトイレで用を足そうと思うようになったら、パンツで外出してみましょう。友達・親戚の家や児童館など、もしものときに安心できる環境からはじめるのがおすすめ。親も子も楽しく過ごせたなら大成功です。

ゲーム感覚でチャレンジして能動的に待つのが成功のカギ
トイトレで大切なのは、能動的に待つこと。ゲーム感覚で大らかに構えておくことが近道に。子どもが失敗したら、まずその時の感情を言葉ではない声として出し、自身を落ち着かせましょう。次に「へっちゃらへっちゃら」など子どもが安心できるワードを2回言い、自分にも言い聞かせ、「今だけ」だと念じます。心に余裕ができれば、後始末をする時の態度も和らぎ、子どもも心から楽になれます。この積み重ねで、子ども自身も成長した際に相手の失敗を責めない人へと育ちます。

トイトレの経験、将来の子育て力に!
トイトレはなかなか実践するのが難しく、焦りばかりが募って当然。しかし、どんな経験も必ず「思い通りにならないから面白い」と楽しめる「子育て力」につながります。保護者のための「子育て力トレーニング」だと心得て、トイトレを楽しんでみましょう。

教えてくれたのは…

八王山学園あすなろ幼稚園 教頭
田中 彩 先生
1973年生まれ。日本女子大大学院にて幼児教育学者の森上史朗氏に師事。あすなろ幼稚園にて保育歴30年。平成22年文部科学大臣優秀教員として表彰。令和2年トイレトレーニング応援活動にて第22回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」を受賞。「トイレの神様」としてYouTubeで情報発信中。