子どもが大人よりも風邪をひきやすい理由
風邪の主な原因はウイルスですが、一部細菌が原因となることもあります。これらの病原体が体内に侵入して、鼻やのどの粘膜に付着し、増殖します。その際に、病原体を排除しようとする免疫反応が、鼻水や咳、発熱、のどの痛みといった症状を引き起こすのです。大人は過去に様々な病気にかかり、病原体に対する免疫が発達していますが、子どもは病歴が少なく免疫力が未発達なため、風邪をひきやすいと考えられます。

ウイルス性の風邪に抗生物質は効果なし
抗生物質(抗菌薬)は、細菌が原因となる風邪に対しては有効です。しかし、200種類以上あるとされているウイルスには、抗生物質は効果がないので、症状を改善するには十分な休養と適切な栄養補給をとること、免疫力を高めることが重要となります。
家庭での適切なケアと症状を見逃さないことが大事
子どもが風邪をひいてしまった場合、まずは家庭での適切なケアが大切です。具体的には、外出や激しい運動をさけて安静にし、十分に休養させましょう。また、発熱などで、脱水が起こりやすいため、こまめな水分補給も大切です。室温を快適に保ち、部屋内を乾燥させないように加湿することも有効です。食欲がない場合は無理に食べさせる必要はありませんが、胃腸に負担をかけない消化のいいものを、食べられる範囲で用意してください。乳幼児は症状が急変することがあるため、病院に連れて行くタイミングにも注意が必要です。以下のようなケースが見られる場合は、医療機関を受診しましょう。
①生後3か月未満で38度以上の発熱がある
抵抗力が弱く、重症化しやすいため
②ぐったりしている、呼びかけに反応しない、意識がはっきりしない
③けいれんを起こした
④呼吸が苦しそう
肩で息をしている、ゼーゼー・ヒューヒューと音がする、咳き込んで水分もとれない、犬が吠えるような咳をするなど
⑤顔や唇の色が悪い
⑥嘔吐を繰り返している、水分を全く摂取できない、半日以上おしっこが出ない
⑦泣き方がいつもと違う、機嫌が極端に悪い
⑧熱が3日以上続いている、または一度下がった熱が再び上がってきた
⑨いつもと様子が違う、心配なことがある

子どもの状態をよく観察し、少しでも気になることがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。ママやパパの直感も大切です。
解熱剤は症状緩和の対症療法と心得て
解熱剤は鎮痛作用もあるため、頭痛、関節痛、のどの痛みなどで辛そうな場合は服用させてもいいです。ただし、症状を一時的に和らげるだけの対症療法であり、病原体をやっつける効果はゼロであることを理解しておきましょう。熱がそう高くなくてもぐったりしていたり水分があまり摂れなかったりする場合、まずは、安静を保って休息を取らせ、子どもに合わせて快適な室温や湿度に設定し、衣服を変えるなどして環境を整えましょう。水分を自身で摂取できない場合は、親御さんがスプーンやスポイトで少しずつでも口に運んであげましょう。病状がどんどん悪化していく、親が不安で仕方がないといった場合は、医療機関への受診をご検討ください。

子どもの免疫力を高め、 家に風邪を持ち込まない努力を
子どもの風邪予防として、第一に体調を保つこと。十分な睡眠とバランスのいい食生活を習慣づけることが重要になります。また、同居している家族(両親、祖父母、きょうだい)が、手洗いやマスク装着を励行し、風邪にかからない、ウイルスを自宅に持ち込まないことが大切です。そして、感染症予防のためにも、月齢・年齢に合わせ指定されているワクチンをきちんと接種するよう心がけましょう。

教えてくれたのは…

医療法人保坂小児クリニック 院長
保坂 泰介 先生
1990年京都大学医学部卒業。整形外科医としてキャリアを開始し京都大学病院等で勤務、京都大学大学院・米国留学にて癌遺伝子研究に従事。その後小児科医に転向し、大阪旭こども病院勤務を経て、2015年から保坂小児クリニック院長、現在に至る。日本専門医機構 小児科専門医・整形外科専門医・リハビリ科専門医。