子どもの育脳|ともに育つ・育む
幼少期の子どもの脳はどのように育つのでしょうか。 脳を健やかに育むため親としての関わり方は? 子どもの脳の発達に詳しい小児科医の成田奈緒子先生にお伺いしました。
まずは「からだの脳」を健やかに育てましょう!
人間の脳には「大脳辺縁系」と「脳幹」という部分があります。「大脳辺縁系」は怒りや恐怖など動物的な情動を司り、「脳幹」は自律神経の調節やホルモンの分泌、呼吸や反射などの生命維持のための働きを行います。この2つは、生きるために必要な「からだの脳」ともいえる場所で、生まれてから5歳頃までに完成します。まずはこの脳を健やかに育てることが何より大切。早寝早起き、規則的な食事、たくさん遊んで体を動かすことを心がけましょう。
脳の発達に最も大切なのは生活環境を整えること!
子どもの脳の発達を促すために、大人が特別なことをしなくても大丈夫。大切なのは生まれてからの環境です。ここで言う環境は知育が主体ではなく、生活が主体のもの。それを私は、「早起きリズムで脳を育てる」と表現しています。特に、5歳までの体と脳の発達には、睡眠をはじめとする生活リズムがとても大切。脳の発達には、周りが与える刺激、五感からの刺激がとても重要です。親ができるのは、子どもの五感を刺激する環境を生活の中で作っていくことではないでしょうか。
子どもの脳を育てるために必要なこととは?
脳をよりよく育てていくために大切な環境と、関わり方について大切なポイントを6つご紹介します。
①確立された、ブレない生活習慣
②調和が取れたスムーズなコミュニケーション
③お互いを尊重して協力しあう体制・役割分担
④ストレスの適切な対処法を共有する
⑤大人と子どもが互いに楽しむ、ポジティブな家庭の雰囲気を作る
⑥大人はブレない軸を持つ
言葉の発達を促すために効果的な声のかけ方は?
1才の終わりから2才にかけて、言葉の発達がどんどんすすんできます。いろいろな語彙を増やしていく時期なので、赤ちゃん言葉はなるべく使わず、正しい言葉で語りかけてあげましょう。子どもの目の前で口の動きをはっきり見せることで、発音の仕方も覚えていきます。五感の発達を促す働きかけとともに言葉を伝えることが、言葉の発達を促すことにつながります。
2才頃からの「イヤイヤ期」脳の中はどうなっているの?
イヤイヤ期は、脳の中心部、先ほどもご紹介した「からだの脳」が育っているということ。喜怒哀楽をそのまま本能として発出できることが、この時期には最も重要です。大人ができることは、「この時期当然のこと」として抑え込まず、おおらかに受け止めること。例えば、子どもが食べ物を口に含んだまま席を立ち、うろうろと歩き回ろうとします。座ってと言っても激しくイヤイヤをして座ろうとしません。そこで、「座ったらあとでおやつをあげる」と代替え案を出したり、「オニさんが来るよ」と脅したところで、子どもには何も伝わりません。「そっか、座るのがいやなんだね」と一旦受け止め、「でもここは静かに座って食べる場所だよ」と伝えます。笑顔で受け止めてから「正しい知識」を伝えることが大切です。
脳の発達に効果的な指先を使う遊びを教えて!
生まれてすぐに発達するのが、ものを見る機能を担う「視覚野」と、音を聞く機能に関わる「聴覚野」。次に、指の細かい動きを司る「頭頂葉」の「運動野」が発達します。1才を過ぎた頃から、少しずつ高度な動きをするおもちゃや遊びを取り入れていくとよいでしょう。例えば、小さな穴に手を入れてものを取り出す、パズルをはめる、球を転がす、お菓子をつまむ、紙をくちゃくちゃにするなど、身近なものを使って、親も楽しみながら遊んであげましょう。
脳の発達に年齢制限はありません!
脳は生まれてから18年をかけて育ちます。そして、適度な刺激を与えていれば、一生育ち続けることがわかっています。そのためにも、幼少期のうちに生活リズムを整え、身体のリズムを作っておくことが何より大切。体が健康的に成長してこそ、脳も健やかに成長するのです。まずは親自身が健康な体と心で子どもと笑顔で接することも、実は1番大切かもしれませんね。
子どもの脳の発達を促すベストな環境づくり
◆早寝早起きで生活リズムを整える
◆規則的で健康的な食事をとる
◆たくさん遊んで体を動かし、五感を刺激する
周囲の大人たちが、意識して環境を整えて いくことが大切です。
教えてくれたのは…
文教大学教育学部教授・子育て科学アクシス代表 成田奈緒子 先生
1987年神戸大学卒業。小児科医、医学博士、臨床医、研究者として活動しながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(合同出版)等多数。