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一生の視力を左右する乳幼児期 守ろう! 子どもの大切な目|ともに育つ・育む

スマホなどの影響により、視力が落ちたり、 目の健康が失われてしまうことも。 大切な目について、専門家の先生と一緒に考えてみましょう。

子どもの目の発達

生まれたての赤ちゃんは明るい暗いがわかる程度ですが、2歳で視力0.5前後に発達し5歳で8割の子どもが視力1.0に達していきます。乳幼児期は、子どもの目の発達にとって、とても大事な時期なのです。
強い遠視や乱視、近視があったり、目の位置がずれている(斜視)、さらには目の機能が発達しない弱視になってしまうことも。片目の視力が良い時や、3歳で視力0.2くらいの視力があると、周囲の大人は子どもの視力が悪いことには気づきません。このため3歳児眼科健診で片目ずつ視力を測定し、両眼ともに視力が順調に育っているかを確かめてください。たとえ弱視が見つかっても、3歳ならばほとんどの場合、治療することが可能です。
また、最近では子どもの遠視、近視、乱視を測定し、眼の位置も同時に確かめることができる機器も出てきました。小児科の先生によっては、乳幼児健診の際に測定してくれることもありますが、精密検査を勧められたらぜひ眼科を受診してください。目を細めて見る、極端に色々なものに近づいて見る、目の位置が気になる、など気になることがあったら、また園や学校の健診で眼科受診を勧められたら放っておかず、できるだけ早く眼科を受診しましょう。

スマホと子どもの目

ピント合わせと眼球運動の発達への影響

子どもの視力の発達は6歳頃までが勝負になります。実はこの時期には視力だけでなく、近くのものや遠くのものにピントを合わせたり、見たいものへ視線を向けたりする眼球運動も発達していきます。本を読んだり、黒板の文字を写したりするときにはとても大事な機能です。赤ちゃんがスマホを見るとき、体は全く動かず、眼球運動も狭い画面の範囲だけです。これではピント合わせや眼球運動の発達が悪くなってしまう可能性は否定できないと思います。

近視への影響

近年、近視の人が全世界的に急増していることが問題になっています。強い近視になると、緑内障や網膜剥離などの危険性が高まります。両親が近視であれば、両親が近視でない人の7~8倍近視の頻度が高くなることがわかっていますが、遺伝だけではなく、最近の研究では、30 cm以内に近づいて作業をすること、それが30分以上続くと近視の進行が早いこと、また屋外活動を1日2時間、週14時間以上すると、近視の進行が抑制されることもわかってきています。スマホを見る距離は平均20~25 cm、子どもではもっと近づいて見ていると考えられ、スマホは危険と言わざるをえません。

目の位置や両眼で、ものを立体的に見る機能への影響

両眼で立体的にものを見る機能も、乳幼児期に急速に発達しますが、最近スマホを長時間見ていて、内斜視(どちらかの目が内側に入ってしまって視線がずれてしまう状態)になる人の報告例が急増しています。内斜視になると立体的にものを見ることはできません。スマホにのめり込む10代の報告が多いのですが、スマホの使用開始の低年齢化も問題になっています。眼位も眼球運動も不安定な小さな子どもの今後がとても心配です。

ブルーライトの影響

日中、日光からブルーライトをたくさん浴びて、日没とともにブルーライトが消えると、メラトニンという睡眠を司るホルモンが分泌されて眠くなってきます。夜遅くまで、ブルーライトを浴びていると、睡眠のパターンが壊れてしまうと言われています。スマホから出るブルーライトの量は多くありませんが距離が近いため、影響が大きいと言われています。

WHOからの提言

2019年4月WHOから「乳幼児に関する運動とScreen timeに関するガイドライン」が出されました。スクリーン・タイムとはTV、ビデオ、ゲーム機器、スマホなどを見て、体を動かさずじっと座っている時間のこと。「2歳未満の子どもには推奨されない。2歳から4歳までの子どもでは1日1時間まで。子どもはたくさん体を動かすことが強く推奨される」というものです。
子どもの一生の視力を左右する乳幼児期。体を使った外遊びで、子どもの目の色々な機能が育ちます。スマホに頼らず、ぜひ一緒に体を動かして戸外で遊びましょう。ママ・パパの健康・視力にもきっと良い影響を及ぼすはずです。

子どもの視力が悪くなっている!

裸眼視力 1.0 未満の者の割合の推移

前年度と比べると、幼稚園、小学校、高校では増加しており、小学校と高校では過去最高となっています。

「学校保健統計調査-平成30年度」(文部科学省)より作成

教えてくれたのは… 

平和眼科 院長、眼科専門医 富田 香 さん

慶應義塾大学医学部卒業。国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)眼科等を経て、1987年より現職。眼科一般の他小児眼科が専門。弱視や斜視の診療の他、先天疾患による視力障害や、発達障害のお子さんの診療や支援も行っている。

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この記事を書いた人

まみたん編集部

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